シン・シティ

 観てきました。ここまでマッチョな話もいまどき珍しいというか、闘争状態に適応した男どもと、おなじく闘争状態に適応したきれいなおねいさんズが満ち溢れるわかりやすい夢のような街*1ベイシン・シティ、通称シン・シティを舞台にした、愛と信義に関する男たちの三つの物語です。もとはフランク・ミラー作のグラフィック・ノベルですね。以下つらつらと感想をば。

  • まずご注意。宣伝が勘違い誘導を仕掛けてますが、リアルなハードボイルド映画じゃありません。登場人物はだれもかれも超人濃度高いバイオレンスマシーンです。手首や首や腕脚がぼんぼん飛びますので、嫌いな人は要注意。JARO! JARO!
  • アメコミ完全映像化、なので場面場面が活人画のように決まっております。ひとつのスタイルに貫かれた画面が堪能できます(オサレかどうかはまた別の話)。ただ、原作未読なので判りませんが、たぶん原作どおりに主人公視点のモノローグがぎっしり入ってくるので、どうにも単調になるきらいあり。途中でしんどなってしもた。
  • 「マーヴとゴールディの物語」「ドワイトとゲイルの物語」「ハーディガンとナンシーの物語」の三つのエピソードのオムニバスだという情報は事前に得ていたものの、後に行くほど時系列をさかのぼっていくという情報はなかったので、多少混乱(だから、「ハーディガンとナンシーの物語」には、まだ元気なマーヴとケヴィンがちょっと出てくる)。「BASIN CITY」の道路案内板が銃撃されて「SIN CITY」になったのは、「ドワイトとゲイルの物語」の銃撃戦のあおりを喰らったからかしら(「ハーディガンとナンシーの物語」の時点ではまだ無事)。ここらへんちょっと注意してなかったのでわからなかった。
  • イライジャ・ウッドはどんな役でもホビットの若旦那に見えて久しかったけれど、本作でメガネっ漢という新境地を開拓。フロド・バギンズの呪縛から脱するか? しかしまたまともな人の役をやるとフロドに見えてしまうのだろうなあ。
  • 娼婦が自治をしている区画・オールドタウンですが、何かヘンだなあと思ったらポン引きの人が見当たりませんでした。おお、ファンタスティックだなー。ブローカー(女衒)なしに娼婦が商売している直販システムなんだろうか(あのようすじゃそうなんだろうな)。それにしても商売とはいえ夜やら雨天にあの格好で街を闊歩するのは寒そうだ。あとフィクションにおける娼婦娼夫の皆さんの外見と、現実のセックスワーカーの皆さんの外見・内実とはどれくらい共通点があるのだろうか、とゆくりもなく考えてみたり。
  • ドワイトがつき落とされたのは恐竜の像がある公園の中のタール坑。ということは、ロサンゼルス在住の恐竜探偵ヴィンセント・ルビオが『鉤爪プレイバック』で落とされたのと同じ場所ですね。シン・シティは西海岸にあるのか。
  • コントラストきついモノクロ画面+パートカラーなので、けっこう目に厳しい映画でした。特に黄色い人! お前だ! 色合いといいむかつくやっちゃな! <製作側の思う壺。
  • ハーディガンが農場に忍び込んだとき、ケヴィンはせっかく外で本読んでた? のに、どうして気づかなかったんだろうか。あとナンシーに何もしなかったのが不思議。19歳では若すぎたのだろうか。それとも黄色い人の気が済んだらお下げ渡しっていうことになっていたのかな。

*1:悪夢も夢のうちだから。