ビューティフル・ボーイ

…時々俺は考える
ズボンはいた女は正常で
なにゆえスカート男は変態なんだろう?
川原泉「月夜のドレス」

 観てきました。かつて「タイのオカマキックボクサー」*1という売り文句で、日本でも試合をした事のある元ムエタイチャンプ・パリンヤー・ジャルーンポンの半生記。

  • 伝記映画なんですが、開始そうそうにパリンヤーがパッポンタウンの裏町で、大立ち回り(屋台が大崩壊したり、ちょっと「マッハ!!!!!」風)を見せるので、もしかして「なんちゃって伝記」かしらんと思いましたが、ハッタリというかケレンのあるアクションシーンはそこのみ。あとはガチンコのムエタイ試合シーンでした。しかしストールとハイヒールサンダル+長い髪であんなに動けるなんて、ムエタイ戦士の運動能力ってのはすごいな。
  • あ、パリンヤー役の俳優さんはアッサニー・スワンという元ムエタイチャンプです。カトゥーイ(オカマ姐さん)ではないので、日ごろ女の人の格好になじみがないことを考えると、やっぱりムエタイ戦士ってすげえ。
  • タイのおまつりには、ムエタイの試合と美女コンテストが対で付き物のようです。「男らしさ」と「女らしさ」のアピール要素が並び立っているのが興味深い。
  • ノン・トゥムの周りの人たちは、それなりに(所属事務所のオーナーとか、思惑ありの人もいるけど)彼の「かわいいかっこしたい」意志を頭ごなしに否定したりしないので、いい人たちだなと思いました。ムエタイ選手として強かったという大きなアドバンテージもあったろうけど、彼はわりと恵まれた環境だったのだと思う。
  • 「お前の心からの望みであれば、現世で叶うだろう。ここまでよく旅をしてきたな。もう家にお帰り」和尚さんかっこいいね。仏教は因果応報の論理で現世の不条理をあきらめさせるケがあるのであまり好きではないのですが、あの科白はかっこよかった(うろ覚え)。宗教は世界のしくみを説明すると同時に、生きづらさを救うためのものだからな。ちょっと見直したぜ仏教(タイは上座部仏教なので、日本のとはちょっと系統が違うんだけど)。
  • ナットとの関係は「淡い初恋」だったのかー!? いや私的には普通に仲良しさんにしか見えなかったので。中高生男子同士だったらきゃあきゃあしながらあれくらいどつきあうだろう。いや自分のコミュニケーションリテラシーがかなり低い自覚はあるけどさ。でもあれ恋かー? 

 さて、パリンヤーさんは現在、タイでモデル兼格闘技コーチをやっています。これ知ったのは昔の「世界ふしぎ発見!」でした。格闘家のころしか知らなかったので、転身に驚くと同時に、ああ元気に仕事してるんだーと思ったことを覚えています。

*1:これについては、かつてファンロード誌の投稿ネタで「『ビジュアル系ムエタイ戦士』ではなぜいかんのか」というのがありました。激しく同意する。