「補償金もDRMも必要ない」――音楽家 平沢進氏の提言

 われらが平沢進師匠がJASRACをめぐるお金の仕組みについて教えてくれますよ。
 読んでて一番びっくりしたのがこのくだり。

例えばメジャーなレコード会社で活動してたとしますよね。レコーディングが終わるとある日突然、出版会社から契約書が届くんですよ。で、契約してくれと。契約条項にいろいろ書いてあるんですけど、契約書が送られて来た時点で、JASRACにもう勝手に登録されているんです。残念ながらアーティストは、著作権に関してまったく疎い。同時に私自身も疎かったがために、そういうものだと思いこんでいたわけですね。それによって、出版会社に権利が永久譲渡されている曲というのがあったりするんですよ。で、JASRACで集金されたお金は、この出版会社を通るだけで50%引かれて、アーティストへ戻るという構造があるんですね。出版会社は“プロモーションに努める”と言いますが、成果は保障せず、どんなプロモーションをするのか何度説明を求めても、回答しないことがほとんどです。大きなセールスが期待できるアーティストについては積極的に動きますが。

 アーティストが著作権に疎いのをいいことに、レコーディングしたら契約書送りつけて勝手にJASRACに登録するって……そ れ は 普 通 詐 欺 行 為 と は 云 わ ぬ の か 。JASRACについてはなんかしらんがやりくちがあくどいらしい、くらいのイメージしか持ってなかったのですが、たしかにこれはひどい著作権ゴロ云われても文句は云えませんなあ。アーティストが法律に疎かった+権利関係はJASRACの寡占状態だった(+わかってても対抗手段がわからない?)、の相乗効果で今までバレずにきていたってことなんだろうか。
 10年ほど前に「イラストレーション」誌で、「イラストレーターのための法律講座」みたいな記事がありまして、「広告ポスター用ということで描いたイラストが、いつのまにかノベルティグッズ等に流用されていた(無論追加ギャラ等なし)」みたいな実例があげられていて、「クライアントは嫌がるかもしれないが、仕事を依頼されたときには作品の使用条件等について、契約書をちゃんと取り交わそう」という結論になっていたのを思い出しました。あのときもびっくりした。なんでクリエイターがそんなに立場弱いわけよ? まあ思い出ばなしなんで、今はクリエイターの権利関係についてもっと整備改善がなされていると思いたいのですが、なんつうか、日本では人の創造労働に対して相応の敬意を払わない輩が、“市場に送り出す側”に多すぎですよ。