夢中における視覚について

 めったにないですが、夢を見ました。といっても淡々と日常生活を送っているだけの、面白みのない夢です。現実の風景よりも光量がかなり多めに設定されているので、これは夢だと判っていつつ、これ起きても状況変わらないんじゃね? むしろものがはっきり見えて好都合なのでは? とかまったり考えながらノートに何かを書きこんでおります(どうせろくでもないことであろう)。で、ふと鉛筆に目をやると。

 文字が読めないのです。

 箔押しで何か文字(MITSUBISHIとか)があることは、そこが光を反射しているので判ります。しかし、そこに何の文字が刻印してあるのかが判らない。文字だと判っているのに、私の視神経はそれの具体的な姿を拾わない。はたと気づいてノートを見ると。
 やっぱり文字が読めない。ページ全体にぼんやりと霞がかかったような、そんなようすで文字が拾えない。罫線の上に並んでいるのは、灰色の小さなもやもやした染みばかり。

 これは、夢だ、夢に決まっている。そうであろう、だってこんな現実は嫌だ。文字が読めないなんて、目が潰れたも同然だ! 早く早く醒めてくれ!!

 恐ろしくてかなわなかった。しかも文字が読めない以外は日常なので、肚の底が冷えつつも、どうにも切迫感がないのです。それがまた恐ろしい夢だった。結局この夢が原因で目覚める、ということもなかったしな。
 今までの生涯でも日常ネタの夢ばかり見てきたのですが、考えてみると文字を意識的に読もうとしたのはこれがはじめてだ。今後また夢を見ることがあれば、ドリームランドでは文字が読めないのが一般的な法則なのかを確かめてやろうかと思います。

 しかしあれだ。こういう夢が悪夢のうちなのだから、私は病膏肓レベルの活字中毒だな。