お寒うございますね。「SAMURAI7」完結後のはじめての週末について、晴れ晴れとした寂しさにふけりつつも、週末いっぱいかかった持ち帰りの自宅作業が、ついさっきやっと終わった安堵のほうがでかいかもしれない。これで来週、遠距離シフトの終了前に呻吟する必要もあるまいて。
 まあ遠距離シフトの唯一の利点は、通勤時間が二時間近くあるので、本がたくさん読めることです。あとHDレコーダの録画整理と、借りてきたDVD観賞。ストレス解消の意味もあって、インプットは多くなった。ただ、へたばっていて考えがまとまらない。断片的な考えは浮かぶけど、全体の結構や平仄が組み立てられない。受身一方って感じで、辛いです。はやくシフト統一にならないかなー。

 というわけで、このところのインプット覚え書き。

  • ノエイン もう一人の君へ」……今途中まで観たのですが、面白い。函館を舞台にした、小学生たちの青春ものファンタジーと思いきや、実は平行宇宙ものSFですよ。設定もわりとハードで、かつてSFマガジン誌でおすすめされていただけのことはある。監督が「天空のエスカフローネ」の赤根和樹氏なので、BGMに合唱が使われていたり、ちょっと感じが似てるな。あと、家とかパースのついた物体の周りをカメラがまわる場面にCGを巧く使っていると思います。非日常のオブジェ(野伏せり様とか)にCGを使うのはよくあるけど、生活臭強めのオブジェにCG使ってて、それが画面に巧くなじんでるのが印象的。それから、こどもの描かれ方がわりとリアルだと思う。女の子の言葉遣いとかね。
  • 星界の紋章」……原作好きなので見てみました。キャラデザインがあまり好きではなかったんだけど*1、全十三話と尺も少ない中、わりとがんばってアニメにしていたと思います。あ、スファグノーフ侯国の風俗が原作どおりにもっと悪趣味で、建築も変な複合建築だったらもっとよかった。あと、最終巻の特典映像で、作者の森岡浩之氏がアーヴ語をしゃべってくれたんですが、その前にちょいとアンチョコを参照しておいでで、そのアンチョコに「序数」とかの一覧が整然と並んでいるのがちらりと映っていて、大変興味深かったです。人工言語を作るには、まず整然とした法則性を好む心性が必要なのだなあ。トールキン翁もそういう人だったんだろうか。
  • オーバーマン キングゲイナー」……これも今途中。富野由悠季節の遠未来はっちゃけロボットアクション。超面白い! シベリアの大地をゆく都市ユニットの行列というヴィジョンが燃えだ。私のオタク人生の始まりは、「機動戦士Zガンダム」放映時だったので、あの独特に理屈っぽい富野節には非常になじみ深いというのもあるかもですが。あとキャラデザインの世界観がリアルよりでバランスいいと思う。具体的に云うと、アデット姐さんのサイバーボンデージスーツが「エロカッコイイ」とかよりも「なんだこの人怖ええええ」という浮いた印象を強く与えるのに成功している。現実にああいう恰好の人がいたら持つであろう印象を、フィクション世界である程度再現している。大抵の漫画・アニメだったらああいうのはスタイリッシュよりに演出(?)されてしまいますよ。凄い。あと、スタッフに吉田健一という方がおいでですが、この人の名前のクレジットを見るたびに、イギリス贔屓の英文学者・翻訳家(故人)を思い出してしまいます。まあそんな人は私だけでいい。それにしてもヤッサバのおっちゃんの命数はあそこで尽きてしまったのか……。
  • 巌窟王』……これはGONZOのアニメではないですよ。黒岩涙香の翻案版です。通勤列車で立ちんぼしながら読了。明治時代の翻案なので、ほとんどのキャラ名に日本語化パッチが当たっており、そんな人々が巴里府やら羅馬府やらであれこれしているので、なかなか面白い世界が繰り広げられておりました。面白いので、そのうち名前の対比表とか作ってみようかと思います。「巌窟王GONZOの)」のファンサイトあたりでもうやってる人いるかもしれないけど。よく翻訳小説苦手な人が、理由として「カタカナ名前が覚えられぬ」というのを挙げているので、キャラ名日本語化パッチはそういう人たちには今でも有効かもしれないな。伯爵巌窟島友久の波乱万丈の復讐譚、流石は大デュマ、巻おくあたわざる手練の技でありました。個人的には有井鞆繪姫が幸せになったので、何も云うことはない。ところでこれが私の初「モンテ・クリスト伯」です。世界文学全集の『がんくつ王』とか読まずに来たからなー。原作も読まねば。

 ところで、作業中につけていたNHKの「新日曜美術館」、今回浦上玉堂の特集でした。この人はお武家で、文人生活を目指すあまりに脱藩してしまうんですが、そのときの朋輩の人のインタビューが記録に残ってまして、「浦上は趣味ばっかで仕事なんかろくに真面目にしてなかったすよ」とか「あいつなら、いつかはあんな大それたことをするんじゃないかと思ってました」とか、ワイドショーのテンプレ発言を炸裂させていたのがおもしろかったです。人間てそんなに変わらないのね。浦上玉堂展は、千葉市美術館にて11月3日(金)から12月3日(日)まで開催。

 さて寝ましょう。あと三日をこなせば近距離シフトだ……っ!

*1:あの顔の骨格では、相当頭の鉢が開いてるのじゃないかとか、ジントが白人のわりに童顔過ぎだろとか、星界軍の軍衣は原作どおり完全に黒赤のスタンダールカラーにしてほしかったとか、ぺネージュさんの髪が結い上げられてないじゃないかとか。